
パブリック・エナミーの12インチシングルを久しぶりに手に取る。レオス・カラックスの『ポンヌフの恋人』で印象的に使われていたあの曲だ。映画館を出た後、あの衝撃的なシーンが脳裏から離れず、家に帰ってすぐにターンテーブルに針を落とした。何年ぶりだろうか。
黄色い枠に包まれたジャケットは、1987年のニューヨークの空気を封じ込めている。地下駐車場に集うチャック・Dとそのクルーの眼差しには、単なるポーズを超えた確信がある。これは音楽であると同時に、宣言なのだ。
A面のタイトル曲「You’re Gonna Get Yours」は、パブリック・エナミーというグループの本質を凝縮した3分半の傑作だ。冒頭から炸裂するサイレン音は、緊急事態の到来を告げる。ボム・スクワッドによるプロダクションは、ジェームス・ブラウンのファンクビートを解体し、ハードロックのギターリフと衝突させ、まったく新しい音響空間を創造する。チャック・Dの低く轟くような声は、ラップというよりも演説に近い。フレーバー・フレイヴの甲高い合いの手が対照的な緊張感を生み出す。この曲でパブリック・エナミーは、ヒップホップが単なるパーティー・ミュージックではなく、社会批評の武器になりうることを証明した。
「Miuzi Weighs a Ton」は、さらに実験的だ。重厚なベースラインの上に、無数の音の破片が降り注ぐ。サンプリングされた音源は識別不可能なまでに加工され、まるで都市の喧騒そのものが音楽化されたようだ。タイトルが示唆する暴力性は、直接的な描写ではなく、音の密度とテクスチャーによって表現される。ここには洗練されたアヴァンギャルドの感性がある。
「Rebel Without a Pause」は、この12インチの中でも特に重要な一曲だ。執拗に繰り返されるサックスのリフは、まるで機関銃のように容赦なく聴き手を攻撃する。このミニマルな反復が生み出す催眠効果は強烈だ。チャック・Dのリリックは、反抗することの正当性を高らかに宣言する。タイトルはジェームス・ディーンの映画を想起させるが、ここでの反抗は個人的な疎外感ではなく、集団的な政治的覚醒なのだ。
レオス・カラックスが『ポンヌフの恋人』でこの音楽を選んだ理由が、針を落とすたびに理解できる気がする。セーヌ川に架かる古い橋と、ニューヨークの地下から発せられたこの音楽は、場所も時代も異なるのに不思議と共鳴する。どちらも周縁に追いやられた者たちの叫びであり、愛であり、抵抗だからだ。
この12インチシングルは、単なる楽曲の集合体ではない。それは1980年代後半という時代の音響的スナップショットであり、ヒップホップというジャンルが持つ革命的可能性の証明でもある。針がレコードの溝をなぞるたびに、時代を超えて響くこの音楽の力強さに圧倒される。



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