終末世界の人間性の崩壊:ニア・ダコスタ『28年後… 白骨の神殿』作品評

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ニア・ダコスタ監督の『28年後… 白骨の神殿』(原題:28 Years Later: The Bone Temple、2026年)は、ダニー・ボイルとアレックス・ガーランドが2002年に生み出した「28」シリーズの最新作であり、三部作の第2章にあたる。前作『28年後…』の直接的な続編として、レイジウイルスが蔓延してから28年が経過したイギリスを舞台に、生き残った人々の絶望と狂気を描く。しかし、本作はシリーズのこれまでの作品とは明確に毛色が異なる。ホラー色は控えめで、前面に出てくるのは人間ドラマと宗教的モチーフである。ウイルスや感染者よりも恐ろしいのは、終末世界で理性を失った人間そのものだという主題が、容赦なく突きつけられる。

前作からの直接的継続という構造

本作を観る上で最も重要なのは、前作『28年後…』の予習がほぼ必須という点である。映画は前作の簡単な振り返りや説明を一切行わず、物語は当然のように続きから始まる。前作のラストで、少年スパイク(アルフィー・ウィリアムズ)は最愛の母の死後、父親が暮らすホーリーアイランドを離れ、ウイルス感染が蔓延するイギリス本土でたった一人で生きる決意をした。感染者に襲われそうになったところをジミー・クリスタル(ジャック・オコンネル)をリーダーとする、全員金髪の謎の集団「ジミーズ」に助けられて前作は終わる。

『白骨の神殿』は、まさにその直後から始まる。スパイクが前作から続く主人公だと途中まで気づかずに観てしまう可能性すらある。この構造は、三部作態勢を取ったことで一つ一つの事柄を深掘りできるようになった証左でもある。しかし、それは同時に、各作品の独立性を犠牲にしているということでもある。

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ジミーズという暴力的カルト集団

本作の最も印象的な要素は、紫の衣装に金の装飾品を身につけたジミー・クリスタルが率いる「ジミーズ」という暴力的カルト集団である。全員が金髪に染めているこの集団は、本土で生き延びる人間を縄で縛り付け、ナイフで身体を傷つける。罰と恐怖により人間を支配する彼らの姿は、R15+指定も当然と思えるバイオレンス描写で展開される。

予告編でジミーが不気味な笑みを浮かべながら語る「準備はいいか?」という台詞は、何らかの儀式の始まりを予感させる。そして実際、人骨を積み上げた幾十もの塔である白骨の神殿が円を描くような炎に包まれる場面は、まさに儀式のように見える。終末世界において、恐怖こそが新たな信仰となる。ジミーズは、文明が崩壊した後に生まれた原始的で残酷な宗教集団なのである。

集団の一員となった金髪のスパイクが恐怖におびえる表情を見せる場面は、少年の成長物語としても機能している。前作で島での生活を捨てた彼は、本土で生き延びるための選択を迫られる。それは、暴力と狂気に屈するのか、それとも別の道を見出すのかという選択である。

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ドクター・ケルソンと白骨の神殿

一方、本作のもう一つの中心人物が、元医者で感染者たちの中で暮らすドクター・ケルソン(レイフ・ファインズ)である。彼は人骨を積み上げた塔、すなわち白骨の神殿を拠点に、医療知識を活かしつつレイジウイルスの治療薬の研究を続けている。

白骨の神殿の地下空間には、書物、医療器具、手回し蓄音機が置かれ、壁には数枚の写真が貼られている。それはおそらく診療所であり、書斎であり、そして感染症が蔓延する前の過去を慈しむ神殿のように見える。ケルソンは、文明の痕跡を集め、人間性の最後の砦を守ろうとしている。

『キャンディマン』で影絵の人形劇で観客を唸らせたニア・ダコスタ監督が、無数の人間の白骨で構築された異形の建造物という題材を得て、どんな光景を描くのか。その答えは、美しくも恐ろしいビジュアルである。白骨の神殿は、死者たちの記念碑であり、同時に生者の狂気の産物でもある。

予告編には、感染者の中でも最も身体が大きく凶暴なアルファとケルソンが対峙し、何かを伝えようとする様子が映る。ケルソンは感染者を単なる怪物としてではなく、治療可能な患者として見ている。彼の研究は、人間性を取り戻すための最後の希望なのか、それとも無意味な執着なのか。

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ジミーズとケルソンの対決

予告編の後半、白骨の神殿にジミーズたちがナイフを持って足を踏み入れる様子が映る。彼らとケルソンの繋がりは何なのか。彼らがケルソンを追う目的は何なのか。そして、全身が炎に包まれるドクター・ケルソンの衝撃的なシーンの叫びは、どこへ向かうのか。

ウイルス感染によりあらゆる価値観が崩壊した世界で、すぐに死ぬわけではないと判断した人間は、どんな行動をするようになるのか。前作ではその一つの形が描かれたが、本作ではそれとは違う二つの典型が、ケルソンとジミーを通して描かれていく。一方は文明と理性を守ろうとし、もう一方は恐怖と暴力によって新しい秩序を築こうとする。この二つの対立が、『白骨の神殿』の核心である。

アーサー・C・クラークの予言

予告編でナレーションのように使用されている古びた音声は、イギリスが誇る20世紀を代表するSF作家、アーサー・C・クラーク(『2001年宇宙の旅』作者)が1964年にBBCの番組で実際に語った映像から音声を抜粋したものである。彼は語る。当たり前の日常が突然消滅した時、もはや人間は理解し合えない。病気が蔓延し、暴力が横行する信じがたい変化を経験し、我々は生き残った。さらに驚くべき変化が、この先も起こるだろう。

この予言は、『28年後』シリーズ全体のテーマを象徴している。パンデミックは一時的な災厄ではなく、人間社会を根本から変えてしまう。そして、その変化は終わらない。文明が崩壊した後、人間はさらなる変化、さらなる堕落を経験する。白骨の神殿は、その変化の一つの到達点である。

キリアン・マーフィーの帰還

そして本作の最大のサプライズは、シリーズ第1作『28日後…』の主人公ジムを演じたキリアン・マーフィが約24年ぶりに同役でシリーズに復帰したことである。ラストにマーフィーが登場し、第3部への期待を持たせる。オスカー俳優となったマーフィーがこの役に戻ってくることは、シリーズへの深い愛着を示している。

マーフィー自身、本作への出演について誇りに思うと述べている。第1作で目覚めたらロンドンが壊滅していたジムが、28年後の世界でどのような姿で現れるのか。彼は生き延びたのか。そして、彼は何を見るのか。

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感染者よりも人間が恐ろしい

ニア・ダコスタ監督が明かしているように、本作で最も恐ろしいのはウイルスや感染者ではなく、人間そのものである。ジミーズの凶行、ケルソンの狂気じみた研究、そして絶望の中で生き延びるために人々が選ぶ道。これらすべてが、人間性の崩壊を示している。

結論として、『28年後… 白骨の神殿』は、シリーズの異端的な野心作である。ホラーよりも人間ドラマを、アクションよりも宗教的モチーフを前面に出したこの作品は、三部作の中間章として重要な位置を占める。ジミーズという暴力的カルト集団とケルソンという孤独な医師という二つの極端を通して、終末世界における人間の生き方の選択肢を問いかける。そして、その問いに明確な答えは出さない。ただ、白骨の神殿が炎に包まれ、叫びが響き渡る。その先に何があるのかは、三部作の最終章を待つしかない。しかし、確実なのは、さらに驚くべき変化が起こるだろうということだ。アーサー・C・クラークが予言したように。

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