【第3061回】肉体の融合が語る現代的コミットメント論:マイケル・シャンクス『トゥギャザー』作品評

新作評

マイケル・シャンクスの長編デビュー作『トゥギャザー』(2025)は、ボディホラーという形式を借りながら、現代的な恋愛関係におけるコミットメントの恐怖を文字通り「身体化」した作品である。2025年のサンダンス映画祭でプレミア上映され、NEONが1700万ドルで配給権を獲得したこの作品は、デイヴ・フランコとアリソン・ブリーという実際の夫婦を主演に迎え、長期的な関係性の中で生じる共依存と自己喪失の恐怖を、粘着質で生々しいビジュアルで描き出す。

プラトンの寓話から始まる融合の悪夢

本作のテーマの核心には、プラトンの『饗宴』で語られる「人間はもともと四本腕、四本脚、二つの顔を持つ存在だったが、ゼウスに分割され、以来もう半分を探し求めている」という寓話がある。シャンクスはこの古典的な愛の定義を、21世紀のミレニアル世代が抱える「本当にコミットしていいのか」という不安と重ね合わせる。主人公ティムとミリーは、都会から田舎へ引っ越す長期カップルとして登場するが、二人の関係はすでに危機的状況にある。ティムは35歳になってもまだインディロックバンドでの成功を夢見る未熟な男であり、ミリーは教師としてのキャリアを優先するため田舎の職を受け入れた現実的な女性だ。映画冒頭、ミリーがティムにプロポーズするが、彼は答えられない。この象徴的なシーンが、二人の関係性の不均衡を端的に示す。

超自然的な力による文字通りの「一体化」

田舎の新居で、二人は謎の超自然的な力に遭遇する。その力は、二人の身体を文字通り融合させ始める——最初は性器が癒着し、次に腕、そして全身へと。シャンクスはこのグロテスクなプロセスを、実物大の性器プロップ(監督のパートナーがアダルトグッズ会社勤務だったため無料提供された)や、ラリー・ヴァン・ダインホーフェンによる精巧なプロステティクス、そしてFramestoreのCGIを駆使して描写する。フランコとブリーは実際に何時間も腕を繋げるプロステティクスを装着し、一緒にトイレに行かざるを得ない状況を経験したという——この撮影プロセス自体が、映画のテーマを体現している。

クローネンバーグとシャマランの影響

シャンクスは『遊星からの物体X』、クローネンバーグ作品、そしてM・ナイト・シャマランの『アンブレイカブル』や『サイン』からの影響を公言している。エンニオ・モリコーネのスコアを聴きながら脚本を書き、H・R・ギーガーのデザインを参考に洞窟シーンを構築した。だが彼が意識的に避けたのは、2000年代のホラー映画に蔓延した「シリアスだから彩度を落としてグレーにする」という美学だ。本作は70年代・80年代の映画のようなリッチで色彩豊かな映像を目指し、恐怖の中にも官能性と生命力を宿らせている。

ミレニアル世代の関係性への鋭い観察

本作が秀逸なのは、ホラーのギミックだけでなく、現代的な恋愛関係への鋭い観察にある。ティムは親を亡くした喪失感から感情的に距離を置き、インポテンツにも悩む。ミリーはキャリアのために田舎に来たものの、関係の停滞に苛立っている。シャンクスはこの「ミレニアル世代のコミットメント恐怖症」を、身体的融合という究極の比喩で表現する。相手と完全に一体化することへの恐怖と欲望が、血と骨と肉の問題として提示されるのだ。

17年間のパートナーシップからの自己省察

シャンクス自身、17年間のパートナーと同棲を始めた際、「同じ友人、同じ食べ物、同じ空気——どこまでが自分で、どこからが彼女なのか分からなくなった」と語る。本作はその実存的な不安を映画化したものであり、撮影終了時には彼女が妊娠していた。「この映画は、誰かに完全にコミットすることへの恐怖と不安の祝祭であり検証だった。そして今、映画が完成した今、かつてないほど彼女と繋がり、コミットしている」。このシャンクスの言葉は、本作が単なるホラー映画ではなく、極めて個人的な自己省察の産物であることを示している。

実際の夫婦が演じることの意味

デイヴ・フランコとアリソン・ブリーという実際の夫婦をキャスティングしたことは、本作の成功の鍵である。二人は製作にも関わり、自分たちの関係性をメタ的に投影しながら、極限状態での演技を見せる。身体が融合していくプロセスは、二人の演技力と物理的なコミットメントによって、ただのグロ描写を超えた切実さを帯びる。

賛否の分かれる評価

批評的には賛否が分かれた。『ウォール・ストリート・ジャーナル』のザカリー・バーンズは「完全に構想されたホラー映画というより、印象的に気持ち悪いエフェクトが重ねられた、もったりした恋愛ドラマ」と酷評した一方、多くの批評家は「容赦ない共依存関係の解剖であり、同時に胃がひっくり返るようなボディホラー」として高く評価した。本作の問題点は、物語の行き先が限定的であることと、ペーシングの問題だが、真の価値は「細部へのこだわり」と「カップルが危機にどう反応するか」という描写にある。

著作権訴訟という影

本作は2025年5月、パトリック・ヘンリー・フェランの2023年の作品『Better Half』の著作権侵害で訴えられた。フェランの会社StudioFestは、2020年8月にブリーとフランコに脚本を売り込んだが、二人が「自分たちでプロデュースしたい」と拒否し、その後似たコンセプトの作品を作ったと主張している。この訴訟の行方は注目されるが、少なくとも「カップルの身体的融合」というアイデア自体は、プラトン以来の古典的テーマであることは指摘しておくべきだろう。

NEONによる大型買い付けと興行成績

サンダンスでの口コミを受け、A24、NEON、Apple TV+、フォーカス・フィーチャーズなど複数の会社が争奪戦を繰り広げ、最終的にNEONが1700万ドル(サンダンス2025での最初の大型買い付け)で獲得した。7月30日に全米公開され、世界興行収入3200万ドルという、インディホラーとしては上々の成績を収めた。この成功を受け、シャンクスの次回作『Hotel Hotel Hotel Hotel』はA24が配給することが決定している。

結論 愛の物質化としてのボディホラー

『トゥギャザー』は、愛とコミットメントを身体的な問題として扱う勇気ある作品である。クローネンバーグ的な肉体への執着と、シャマラン的な構図の力、そしてシャンクス自身の極めて個人的な不安が融合し、現代的な恋愛映画として機能している。粘着質で気持ち悪く、時に笑えるほど極端だが、その極端さこそが、長期的な関係性の本質——相手と自分の境界が曖昧になっていく恐怖と喜び——を捉えている。完璧な作品ではないが、長編デビュー作として、シャンクスの才能と野心を十分に示す一作である。

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